第57章 【カレカノ】
「あ、あの、英二くん……?」
そんなオレの様子に少し戸惑った顔をする小宮山に、あのさ……そう声のトーンを落としてその顔をまっすぐに見つめた。
「今日の夜にさ、タカさんちで不二の祝勝会あんだけど……小宮山、一緒に行ってくんない?」
そんなオレの頼みに、え……?って小宮山は驚いた顔をして、でも私なんて完全な部外者ですし……なんて視線を泳がせるから、大丈夫だって、いつものメンバーだからさ、そう安心するようになだめる。
「でも……私、そう言うの初めてですし……」
それでも小宮山はなかなかうんと言わないから、やっぱいきなりはキツいかな……?なんて思いながら、やだ?って首を傾げて言うと、嫌って言うか、恥ずかしいですし……そう小宮山は顔を赤くして俯いた。
「……不二にさ、ちゃんと報告したいんだ、小宮山とのことさ」
小宮山との関係を復活させたあの夜、電話で不二と本音の話をした。
オレと小宮山が上手く行けばいいとずっと言い続けていた不二……
だけど、あの穏やかな笑顔の奥では、涙を流しているはずなんだ……
不二はそういうやつだから……
自分のことより、周りのことを大切にするやつだから……
すげー、いいやつで、幸せになってほしいけど……
だけど、
譲れないから……
小宮山のことだけは、不二にだって、他の誰にだって、
絶対譲れないから……
大切な親友だからこそ、一番最初に、直接報告しなきゃなんないんだ……
「……そうですね、不二くんには沢山お世話になってるし、ちゃんとお礼言わないとですよね……」
他の皆さんにも、空港でのお礼と謝罪がまだですし……、そう義務感から意を決した様子の小宮山に、やっぱ真面目、そう内心苦笑いしながら繋いだ手に力を込める。
わがまま言ってごめんな?、そう呟くオレに、こんなの英二くんのわがままに入りませんよ?、なんて小宮山はふふっと笑った。