第57章 【カレカノ】
「ああ、もう、本当に何から何まで……」
そう片付けをしながらまだ自己嫌悪を陥っている小宮山に、本当に美味かったって、そう声をかけながら、携帯に届いたLINEに目を向ける。
それは乾からで、その内容に目を見開いて、それから慌てて小宮山のことを呼び寄せた。
「小宮山!不二、優勝!!」
そう嬉しくて声を張り上げると、小宮山は目を見開いて駆け寄ってきたから、ほら、そう携帯の画面を見せると、いいんですか?、なんて少し戸惑いながら、小宮山は遠慮がちに覗き込んだ。
「本当だ……!」
そう詳しいスコアと同時に不二くんの優勝を知らせる乾からのLINEを眺めながら、小宮山はキラキラと目を輝かせる。
「不二くん、本当に優勝しちゃうなんて凄いですね……」
そうオレの携帯の画面を見ながら、何か思い出している様子の小宮山に、本当にって?、そう問いかけると、あ、不二くん、勝利宣言してたんです、そう小宮山はふふっと笑った。
「一学期最後の日、神社で不二くんの必勝祈願をしたんですけど、そのとき、勝よ、必ずって……」
本当に全国優勝しちゃうなんて、さすが不二くんですよね、そう小宮山は、ほうっとため息を漏らすから、そんな小宮山の手をそっと握りしめた。
一学期の最終日って、オレが小宮山に当て付けで芽衣子ちゃんと仲良く帰った日だよな……
そん時、小宮山、不二とそんなことしてたんだ……
あの髪留めを買ったのもそん時かな……
『負けられない理由ができたからね、小宮山さんと約束したんだ、必ず勝つって……』
そうその日の夕方、公園で会った不二がそう力強い目で話していたことを思い出しながら、あとで不二くんにお祝い言わなくちゃ、なんて嬉しそうに笑う小宮山にモヤモヤする。
あん時はオレが悪かったんだし、オレだって芽衣子ちゃんとデートして帰ったんだから、オレがモヤモヤする資格なんかないんだけどさ……
だけど、それでもそんな2人を想像したらすげー嫌で、その握った手に力を込めた。