第57章 【カレカノ】
「あの、無理しないでくださいね……」
恥ずかしそうに顔を赤くして俯く小宮山を微笑ましく思いながら、その味噌汁に口を付ける。
しょっぱ……しかも、出汁、ぜんぜん効いてない……
その癖、煮干し取り忘れたのか、そのままゴロッと入ってるし……
具材の大きさはバラバラ状態……
他の料理も全体的に火を通しすぎ……
味、濃すぎるか全くないかのどっちか……
砂糖と塩、また間違ってる……
それどころか、醤油とソースも間違ってる……
なんだっけ?、両親には「独創的な味付け」って言われてるんだっけ?
うん、随分、オブラートに包んで言ってもらってんね。
独創的と言うより、もはや破壊的……?
正直、いいところ、全くない。
だけど……
だけど、オレ……
こんな美味い朝食、他に知んないや……
「小宮山、オレさ、こんな隠れてない隠し味、初めて……」
そう呟いて噛みしめるようにもうひとくち、ゆっくりと口に含む。
ずっとオレが食べる様子を不安そうに見ていた小宮山は、そのオレの言葉にハッとした顔をして、それから、私、何か変なもの入れちゃいましたか?、そう青い顔をする。
「そうじゃなくてさ、よく言うじゃん?『隠し味は愛情』ってね♪」
そうオレがウインクしていうと、小宮山は赤い顔をして、ソレナラ、タップリ、ハイッテマス……、そう恥ずかしそうに自分も味噌汁を口に含んだ。
その途端、小宮山はブッと口に含んだ味噌汁を吹き出しそうになり、慌てて手のひらで口を覆う。
スミマセン、タップリスギマシタ……、そうますます真っ赤になって小さく呟く小宮山が可愛くて、またニイッと大きく笑った。