第10章 【ホウカゴ】
初めて口いっぱいに吐き出された熱い欲望の味と感触に、思わず吐き気を催す。
すぐに吐き出したいのに、英二くんがダーメだよん、とソレを許してくれなくて、行き場のない精液が喉の奥に流れ込む。
涙目で英二くんを見上げると、ニヤリと笑う彼と目が合って、やっと私の口を解放してくれた。
解放と同時に飲みきれなかった彼の精液と私の唾液が混じり合ったものが、口からだらしなく溢れ出す。
その様子を英二くんが上から楽しそうに眺めている。
それが恥ずかしいのと、口の中の味に耐えられないのとで、慌てて口を押さえると、必死にトイレへと駆け出した。
もうやだぁ……!!
本格的に気持ち悪くなり、水道で口を濯ぐ。
何度うがいをしても気持ちの悪さは消えなくて、嫌な後味のままハンカチで口を拭う。
顔を洗って、乱れた髪を整えると、なんでもない顔をして教室へと戻る。
教室へ戻ったところで予想もしない事態に、思わず戸惑ってしまう。
そこには彼が私の後ろの席に座り、おかえりーと手を振っていた。
英二くんはいつも終わるとすぐにサッといなくなってしまうから、今日も正直、教室に残っているとは思ってなくて……
だからこんな時、どういう顔をして良いか分からなくなる。
「どったの?」
「だって、いるから・・・」
「なんだよ、それー」
そう目を泳がせる私に、彼が楽しそうに笑うから、ドキンと胸がどうしようもないほど高鳴った。
座れば?、そう促す彼に、戸惑いながら自分の席にちょこんと腰を下ろす。
すぐ後ろに彼が座っているかと思うと、恥ずかしくて、緊張して、ふるえる拳を膝の上でぎゅっと握った。
「ほいっ、口直しだよん、何も持ってないでしょ?」
そう彼がウインクをして私に飴を差し出すから、そっと受け取って口に含むと、ミントの甘くて爽やかな味が口いっぱいに広がっていく。
そんな気紛れに見せる彼の優しさに涙がにじんで、慌てて俯いて髪の毛でそれを隠した。