第57章 【カレカノ】
「作りたかったんです……英二くんが起きたら作ってくれるのは分かってたんですけど……私が英二くんに……」
でもやっぱりやめておけば良かった……、そう首を横に振ってため息をつく小宮山が可愛くて、その指には沢山の絆創膏が巻いてあって、苦手なくせに一生懸命作ってくれたのかと思うと嬉しくて……
その身体をギュッと抱きしめると、英二くん!?そう慌てた小宮山がオレの腕の中で必死に抵抗をした。
「あ、あの、英二くん、服!着てきてください!!」
「ん、もうちょっと小宮山抱きしめたらね」
「い、いえ、まずは先に服を……!」
「やーだよん♪」
好きだと自覚したら、とことん小宮山が愛しくて……
今までと小宮山はなんも変わんないのに、その仕草全てが新鮮で……
多分、ずっと心のどこかで抵抗してきたんだ。
オレなんかが誰かを好きになる資格なんかないんだって……
だけど、小宮山がそんなオレの心を解かしてくれた……
小宮山、あんがとね、そっと囁くと小宮山は観念したように抵抗をやめて、もう……そう呟きながらオレの背中に手を回した。
「おまたへ」
服を着替えてダイニングに戻ると、そこに広がるのはあの朝の光景。
菊丸家に初めて来たとき、オレを迎えてくれた暖かい食卓。
味噌汁をよそいながら、笑顔の小宮山が振り返る。
全てがキラキラと輝いているその景色に目頭を熱くする。
テーブルには焦げてカリカリすぎるトーストに、沸騰して煮詰まったしょっぱすぎる味噌汁。
それから表面は焦げているのに中は半生のカルシウム入り玉子焼と、足が異常に短くて半分しかないタコさんらしきウインナー。
焦げて固そうなシャケの切り身に、茹ですぎてクタクタの野菜のおひたし、全部繋がってヤキモチやいてるキュウリの漬け物。
そこに並ぶのはすげー不格好な料理の数々なんだけど……
お世辞にも美味しそうなんて言えないんだけど……
だけど、オレにとってはこれ以上にない、
最高の朝食だった____