第57章 【カレカノ】
「ゴメンな、オレ、やっぱお前から、小宮山とっちゃうよん?」
以前、初めて小宮山の家に来たとき、オレは小宮山とんないよん、そう帰り際にネコ丸に呟いた一言……
ふと思い出して慌てて否定するオレを、ネコ丸はまだ恨めしそうな目で見ている。
「なにー、やっぱ不満だってのー?んじゃ、オレがいない時は、ネコ丸に貸しといてやるからさ」
そんなオレの妥協案にネコ丸はまだ不満そうにしていて、ガシガシとオレの指に歯をたてる。
イテテテ、こんにゃろ!そのまま暫くネコ丸とジャレ合って、にゃははーと笑った。
ガタガタ、ガッターン!!
突然響いた何かを落とす大きな音に、慌ててネコ丸と2人身体をビクつかせる。
小宮山……何があったんだよ……?、そうドキドキして、慌てて下着だけ履いて部屋から飛び出すと、音がした方へと急いで走りだす。
「小宮山……!今の音どったの!?」
ドアを勢いよく開けて覗いたキッチンには、小宮山がうずくまっていて、あっ……って気まずそうにオレの方を振り向いたから、慌てて小宮山の元に駆け寄った。
「何でも、ないんです、ちょっとお鍋の蓋、落としちゃっただけで……」
「鍋の蓋……って、小宮山……料理、してたの?」
よくみりゃ、小宮山はエプロンをつけていて、コンロの上にある鍋には味噌汁がブクブクと沸騰していて、うわっ!っと慌ててそれのスイッチをとめる。
それから、クンクンと鼻をならして匂いを嗅ぐと、トースターからはこんがりしすぎるくらい香ばしいパンの焼ける香りがした。
「えっと……和洋折衷……?」
「やっぱり可笑しいですよね……、ご飯、保温と炊飯のスイッチ、間違っちゃって……」
そう真っ赤な顔を両手で隠し、もうやだ、そう小さく呟く小宮山が可愛くて、プッと思い切り吹き出してしまい、そんなオレに小宮山はますます顔を赤くした。