第56章 【フタリ】

「小宮山、さっき、痛くして……ゴメンな……？」


２人、ベッドの縁に座ると英二くんは私の髪をなでながら、そう申しわけなさそうに目を伏せる。
あっ、そう言えば、色々ありすぎてすっかりわすれていたけれど、少し乱暴にされたんだって思い出す。


あの時は理由なんて分からなかったけど、今なら凄くよく分かる……
英二くんは私に不安定な気持ちをぶつけることで、自分を保つのに必死だったんだ……


そんなの、別に平気ですよ、そう笑顔を向けて返事をすると、平気なわけ無いじゃん……、なんて英二くんはまた一層眉を下げた。


「もう、乱暴しない……約束するからさ……」


そっと英二くんの手が私の頬に触れ、それから優しいキスをしてくれる。
想いを確かめ合って初めてのキスは、英二くんの後悔と私への気遣いの味がした。








繰り返される優しいキスは、いつしか深いものへと変わり、その先の熱を求めてお互いの気持ちも身体も高めあう。


「やべ……なんか、すげー、緊張する……」


そう私の後頭部を引き寄せる英二くんに、いまさらですか……？、なんてクスクス笑うと、だって、オレ、自覚したばっかだもん……、そう言って英二くんは頬を膨らませる。


やっぱ、恥ずかしいだろ～！、そう言う英二くんの心臓の鼓動は本当に凄くドキドキしていて、頬は真っ赤になっていて、そんな英二くんが愛おしくて、その身体に腕を回して包み込んだ。


「英二くん、大好きです……」


そっと唇を重ねてまた囁くと、英二くんは驚いた顔をして、小宮山、性格、変わった……？なんて目をそらす。


「変わってないですよ……？、ずっと、ずっと、我慢していただけで……」


ずっと我慢していた……
言葉にしたらすべてが終わってしまいそうだったから……
英二くんをつなぎ止めるのに必死だったから……


本当、ごめん……、そう申し訳無さそうに謝ってくれる英二くんの胸に頬を寄せると、黙って首を横に振る。
小宮山、すげー、好き……、そう英二くんはもう一度囁いてくれた。