• テキストサイズ

【テニプリ】闇菊【R18】

第56章 【フタリ】




そっと小宮山の身体から抜け出すと、そんなオレに、英二くん?そう小宮山は首を傾げる。


「あの……どうしたんですか……?」


ああ、また小宮山が不安そうな顔でオレを見ている。
オレ、今、どんな顔、してんだろうな……
そっと俯いて目を伏せる。


小宮山は優しいから……
オレのことなのに、まるで自分のことのように心を痛めてくれるから……


「小宮山、本当に、あんがとね……」


だから、もう、側にいるの、やめる……


そっと小宮山の頬に触れる。
不安そうな顔でオレを見上げる小宮山が、ますます眉を下げる。
まだ瞳に残る涙を拭いて、それから顔を近づけると、小宮山は戸惑いながら瞳を閉じた。


ゆっくりと唇が重なり合う。
それは今までで一番優しくて、一番悲しいキス。
ごめんな、本当にありがとう、そうそのキスに想いを込める。


唇が離れたら、終わりにするから……
小宮山をもうこれ以上、傷つけるのはイヤだから……


唇をそっと離す。
今まで、本当にあんがとね……そう心の中で伝えて笑顔を作る。


「もう、大丈夫だからさ、帰ろ……?」


小宮山は多分嫌がるから、オレの申し出を受け入れてくれないから……


「帰るって……?」

「小宮山ん家に決まってんじゃん……?」


小宮山が眠ったら、こっそり小宮山の側からいなくなるよ……


視線を泳がせながら、不安そうに問いかける小宮山に、ニイッと笑顔を作ってその手を取る。


大五郎を抱えると小宮山の手をゆっくりと握りしめ、それから離れないようにしっかりと指を絡める。


朝の爽やかな空気の中、ギュッと繋がれた手に力を込めて、小宮山の家へと歩き出す。
だけど小宮山はその場を動かずに、オレと繋いだ手をジッと見つめていた。

/ 1433ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp