第56章 【フタリ】
「……英二くん、私、ずっと英二くんの側にいますから」
え……?、思わず目を見開いて小宮山を見下ろす。
小宮山はオレの目を真っ直ぐに見ていて、いつだって小宮山はオレと向き合うときは強い意志を秘めた目で見てくるんだけど、今は本当に強い視線で見つめてきて、その視線から一瞬も逃れらんなくなる。
「ダメですよ、英二くん、私の前からいなくなろうとしている」
……なんで、わかんだよ……?
「でも私、英二くんの側から離れませんから……」
……そんなはっきり、小宮山らしくないじゃん……?
「英二くんに、『いらない』って言われるまで……私、絶対、離れませんから」
小宮山の力強い目の奥底に宿る強い意志に縛りつけられたまま、恐る恐る口を開いた。
「オ、オレ……小宮山なんか、いらな……」
「英二くん、ダメです」
いらない、そうオレが口にする前に小宮山はゆっくりと首を横に振って、そのオレの言葉を打ち消した。
思わず口ごもり、その小宮山の迫力に何もいえなくなる。
そんなオレを小宮山はずっと見つめたまま、すーっと大きく息をすった。
「私の言っている『いらない』は英二くんの本心のことで、心から私が邪魔になった時に言われる『いらない』です。
私のことを思って言ってくれる『いらない』は、本当の『いらない』じゃないんです」
そっと小宮山がオレの胸に頬を寄せる。
なんで小宮山、オレの考えていること、全部わかんだろ……
どうしたらいいか分からずに、ただ立ち尽くす。
「英二くん、私……背負いますから……英二くんがひとりで抱えているもの、一緒に背負いますから……」
目を見開いて小宮山の顔を見つめた。
小宮山はすげー、力強いんだけど優しい目でオレを見上げていて、それから、2人なら、きっと、少しは軽くなりますよ……?、そう目を細めて微笑んだ。