第10章 【ホウカゴ】
「ちょっ、冗談、でしょ……?」
その突然の彼の申し出に心臓が大きくドクンと脈を打つ。
口でって……つまり、それはその……想像しただけで恥ずかしさから顔が真っ赤になる。
お願いだから、冗談だよん!って言って、そう心の中で必死に願い彼の様子を伺うけれど、彼の笑顔は決して冗談などではなさそうで、フーッとため息をついて首を横に振った。
「ムリ、です……!」
「大丈夫だって、この間もやったじゃん?」
「だってあの時は……その……」
その続きがなかなか言えなくて口ごもる。
髪を耳に掛けながら目を泳がせて、なんて言おうか考える。
「エッチの最中だったし?」
そうはっきり言い切る彼の言葉に、恥ずかしくてカァーッと顔が赤くなる。
そんな私を英二くんは面白そうに見下ろしてニヤリと笑う。
「回数こなさないと何時までたってもうまくなんないぞ?」
「ならなくて結構です!!」
「んなこと言ってないでさ、気楽に~気楽に~♪」
そう言って英二くんはカチャカチャとベルトを緩め、既にその存在をうるさいほど主張しているソレを取り出した。
「やっ、本当ムリ!!」
恥ずかしさから慌てて顔を背けると、ギュッと瞳を閉じて顔をブンブンと横に振る。
「つーか、いい加減にしろって」
急に英二くんの声のトーンが低くなり、慌てて彼の顔を見上げると、そこにはさっきまでの笑顔とは打って変わって、冷たく鋭い目つきで私を見下ろしていた。
ギュッと胸を締め付ける痛みが襲い、恐怖で身体が縮こまる。
たくっ、手間かけさせんなよな、そう横を向いてため息をつく英二くんに、ご、ごめんなさい、そう慌てて謝ると、ほらっと彼が私の口元に彼自身を押し当てる。
震える手でソレをそっと包み込み、唇を落として舌を這わす。
分からないなりに必死に口に含んで動かすと、彼が私の髪をゆっくりと撫でた。
そっと彼を見上げると、英二くんはもう怖くない顔で私を見ていて、良かった、そうホッと胸をなで下ろした。