第55章 【オンナジ】チュウガクキ②
ドクン、ドクン____
胸がざわめいて、大きく脈を打ち始める。
タバコとアルコールと香水の香りに一気に血の気が引いて行くのが分かる。
全身が震えだし、息苦しくて慌てて胸をおさえる。
「緊張しているの?可愛いー♪」
「女慣れしていないって、本当だったんだねー!」
両脇を女の子達で囲まれて、ピタッと密着されると腕に胸が当たっているのが分かって、当然、思春期男子としてはすげードキドキすんだけど、オレの場合はそれ以前の問題で……
「ね、英二くんって童貞?」
「どっ!って、にゃに言って……」
「クスクス、ほーんと、可愛い、食べちゃいたい♪」
さっきから全身を襲う恐怖と不安感。
それは拭いきれないあの女の呪縛、そして足枷。
ドクン、ドクン____
布団の中で必死に時が過ぎるのを待った、幼い日々の光景が蘇る。
「ね、英二くん、誰がいい?」
「だ、誰って……?」
「分かるでしょ?好きな子、選んでいいよ?」
「それとも、最初から複数プレイにする?」
じんわりと汗がにじむ。
異様に口の中がカラカラで、喉が乾いて仕方が無く、慌てて出されたグラスに手を伸ばすと一気に喉の奥へと流し込んだ。
「あ、英二くん、それ、アルコールだよ?」
甘い炭酸飲料はどこか大人の味がして、その慣れない味に思わずグハッと吐き出しそうになり、慌てて口を押さえると、大丈夫?そう隣の女がおしぼりを差し出した。
その間近で香る香水の香りが鼻の奥を刺激して、ますます気持ちが悪くなる。
慌てて立ち上がると、オレ、ちょっとトイレ、そう言ってホールの隅の化粧室へと駆けこんだ。
ドクン、ドクン____
トイレに入った途端、思い切り嘔吐した。
洗面台で口を濯ぎ、顔を上げて鏡に映る情けない自分をじっと見つめた。
マジ、ヤバい、何でオレ、こんなことになってんだよ……
全身を支配する恐怖と不安に堪えられず、震える身体を抱えてその場にうずくまった。