第54章 【ウンメイノヒ】チュウガクキ①
「すんません、部外者は出て行ってもらえませんか?ここは青学テニス部のコートなんで……」
ゲームも終わり、周りのみんなと楽しく話をしていると、入り口の方から海堂の不機嫌そうな声が聞こえた。
特に気にせず大石や不二達と話をしていると、聞こえないんすか?そう海堂の声がイラついたものに変わった。
「……うるさいわね、カンケーシャだって言ってるじゃない……えっと、保護者みたいなものよ」
ドクン____
その瞬間、全身の細胞が大きくざわめいた。
騒がしいな、何かあったのかな?そう訝しげにそちらを見るみんなの影で、震える身体を必死に抱え込んだ。
「おい!神聖なコートでタバコなんか吸うんじゃねえ!」
「はー?こっちは大人なのよ?」
「そういう問題じゃねえ!だいたい、昼間っからそんなに酔っ払って、なんなんだテメェは!」
「だから保護者、だってば……分かんない子ね」
海堂のイラついた声が怒鳴り声に変わって、言い争うその女の声に全身から血の気が引いていくのを感じた。
何でだよ……?なんで、オレ、こんなに震えてんだよ……?
「どこよ……ここにくれば簡単に見つかると思ったのに……」
ドクン、ドクン____
分からなかった。
どうしてこんなに身体が震えているのかも、胸の奥底から沸き起こるどうしようもない不安感も。
張り裂けそうな心臓の音は、まるで危険を知らせる警報を鳴らしているかのようで、耐えられずに慌てて耳をふさいだ。
「いるんでしょ?セーガクテニス部にキクマルエイジって……早く呼んでよ?」
ドクン、ドクン、ドクン____
キクマルエイジって……、そうみんながオレの方を振り返った。
みんなの視線の先を確認した声の主もゆっくりとオレの方を振り向いた。
「英ちゃん……やっと見つけた……!」
その瞬間、あんなにうるさかった心臓の音も、周りのざわめきも……、全ての音が止んで何も聞こえなくなった。