第54章 【ウンメイノヒ】チュウガクキ①
「英二!今度、手塚も越前も同じ頃に帰国するそうなんだ!」
「マジでー?んじゃさ、みんなで一緒にテニスしようよ!推薦入試も終わったしさ?題して、青学名物、卒業記念ランキング戦!!」
「はは、こりゃ大変」
テニスばっかりやっていた中学時代も残すところあと少しとなった冬のある日、手塚とおチビが同時期に帰国することになり、お祭り騒ぎが大好きなオレは、みんなに声を掛けてテニスコートに集まるように段取りをとった。
「だったら、その日、夜は親父に頼んで店を貸し切りにして貰うよ、お代のほうは気にしなくていいからさ」
「では俺は急いで新しい乾特製汁の制作に取り掛かろう、時間がないが何とか間に合うだろう」
「ふふ、色々と楽しめそうだね……」
タカさんの提案にやったぁ!と大喜びし、乾の提案になんでだよっ!って頬を膨らませ、不二の笑いに首をすくめて笑い合った。
その時はただ本当にその日が楽しみで仕方がなかった。
「おーし!絶好のテニス日和♪」
予定通り海外組の手塚とおチビが帰国して、オレが計画した卒業記念校内ランキング戦当日は、カラッと晴れた冬空が印象的な小春日和の朝だった。
「あら、英二、どうしたの?レギュラージャージなんて……って、今日だった?卒業記念ランキング戦!」
玄関先でテニスシューズを履いていると、そんなオレにかーちゃんが声を掛ける。
「そだよん、ランキング戦っていっても、みんなでテニスするだけだけどねー」
「それは楽しみね、夕飯、あんたの好きなエビフライにする?……どうせ、河村くんのおうちでご馳走になっても、帰ってきてからまた食べるんでしょ?」
やったぁ~♪かーちゃん、大好き!、そう玄関先で勢いよく抱きつくと、はいはい、わかったから、なんて呆れ顔で見送ってくれるかーちゃんに笑顔をむけて、それから勢いよく外に飛び出した。