第10章 【ホウカゴ】
「つーかさ、小宮山、キスマークつけてんだぜ?」
そう小林が少し小声で首を指差す。
マジで?そう皆が声をそろえる。
あ、気づいてた?
小宮山、バレてるってわかったら卒倒しそうだな、面白いから黙っとこ、そう思ってニヤリと笑う。
「しかもさ、昼休み中に増えたりすんだぜ?」
「マジで?学校でヤってんのかよ?」
「だろうよ、オレ、後ろの席だからチラッと見えるんだけどさ」
つーか、相手、誰だよ、そう盛り上がるあいつ等に、心の中で、ほいほーい、と返事をする。
「意外だよなー、真面目でお堅い学級委員が、学校でヤってるって」
「やべーな、スゲー、そそるんだけど」
ふふーん、だよね、そのギャップがたまんないんだよね~。
その為にわざとクッキリ『しるし』付けてメガネ取り上げたんだしさ。
誰も興味ない小宮山のままじゃ、つまんないじゃん?
そう盛り上がるクラスメイト達を見下ろしながら、思惑通りに進んだこの状況をほくそ笑む。
「ヤってるとき、どんなんだと思う?」
「そりゃ、やっぱ、アレじゃね?上から目線?」
ブッブー、ハッズレ~。
「いやー、アレでいて案外、従順そうじゃね?」
「恥ずかしそうに上目遣いされたらたまんねー!」
ピンポーン、こっちが正解。
ま、オレの場合、弱み握ってるってのもあんだけどさ。
携帯をポンッと空中に放り投げ、くるんと一回転させてキャッチする。
ついでに言うと、素に戻るのか敬語じゃなくなるのも結構ツボ。
「やべー、頼んだら一発ヤらせてくんねーかな?」
「バーカ、お前、頼めんのかよ?」
「ムリムリムリムリ!」
んー、こいつら、今夜は小宮山をおかずにすんね?
せいぜい、あいつの乱れる姿でも妄想して頑張んなって。
オレはこれから本人でスッキリさせて貰うから♪
マジで頼みてー、そう笑いながら屋上を後にする彼らを見送ると、鼻歌を歌いながら小宮山にメールを打った。