第53章 【キクマルケノヒビ】ヨウジキ⑤
「ほらほら、あんた達、英二くんがびっくりしてるでしょ、ごめんなさいね?」
ねーちゃんたちに揉みくちゃにされて戸惑っていると、そう優しいかーちゃんの声が聞こえてきて振り返る。
「みんな、元気で明るいのだけが取り柄だから……」
「ひでー、かーちゃん、それが一番だっていっつも言ってんじゃん!」
「だから、悪いとは言ってないでしょ?」
お兄ちゃん達はもうちょっと勉強もできた方が良いけどね、そう言って冗談っぽく睨みつけるかーちゃんと、その言葉に首をすくめている男の子が2人……
にーちゃん達かな……?そうぼんやりと思いながら眺めた。
「英二くん、お帰りなさい」
ふとオレに視線を戻したかーちゃんが優しい笑顔で手を差し出す。
恥ずかしくて戸惑っていると、英二くん、ただいまだよ!そうねーちゃんの一人がオレを急かした。
「た……ただいま……」
小さく呟いて恐る恐るかーちゃんの手を取ると、お帰りなさい、そう言ってかーちゃんは笑顔で抱きしめてくれた。
かーちゃんの横にはもうかーちゃんに近い身長のにーちゃんと、それより小さいにーちゃんがもう1人。
オレの両脇を取り囲んで離れない、オレよりちょっと大きなねーちゃんが2人。
それから、後ろの方で控えめだけど、優しそうに微笑んでいるじーちゃんとばーちゃん……
「さ、英二くん、入ろうか」
その声に振り返るとオレの少ない荷物を車から下ろしてくれたとーちゃんが、その大きな手で頭をなでてくれる。
この人たちがオレの新しい家族なんだ……
家族、その言葉に胸の辺りが暖かくて、それからくすぐったくて恥ずかしかった。