第53章 【キクマルケノヒビ】ヨウジキ⑤
「さ、英二くん、着いたよ」
数日後、正式な手続きが済んで、迎えに来てくれたとーちゃんに連れられてきたところは、車で数時間走った全く見知らぬ街だった。
遠かったから疲れたろ?、そう声を掛けるとーちゃんに首を横に振って車から降りると、そこには新しくて大きな家が建っていて、古くて小さなアパートと施設しか知らなかったオレは、その家の様子に少し戸惑った。
「家族が多いからね、これでも狭いくらいなんだけど……でもすぐ近くに大きな公園もあるし、きっと楽しく過ごせると思うよ」
そう言ってとーちゃんが玄関のインターホンを押そうとした瞬間、バンっと勢いよく中からドアが開いたから、驚いてその背中に隠れて様子をうかがった。
「英二くん、来た!!」
「ああっ!本当、可愛い!!おめめクリクリ!!髪の毛ハネハネ!!」
気が付いたときには、中から飛び出してきたオレより少し大きな女の子2人に揉みくちゃにされていた。
施設で多くの子供たちと一緒に暮らしていたから、騒がしいのにはもう慣れていたけれど、こんな歓迎は予想していなかったから、どうしたらよいか分からずにまた少し戸惑った。
ねーちゃん達かな……?
キャーキャーと嬉しそうに笑い声をあげながら、2人はオレのことを交互に抱きしめた。