第52章 【キクマルエイジ】ヨウジキ④
「英二くん、ここは毎日楽しいかい?」
「……先生、ダメ、ばっかり言う」
「はは、英二くんは先生苦手かー、でもお友達と遊ぶのは楽しいだろ?」
「……よくわかんない」
沢山の子供たちはいたけれど、どうやって遊んだらいいかわからなくて、あの公園でしていたように、遠くからみんなの様子を眺めていることが多かった。
「英二くん……おじさん、これからも英二くんに会いに来てもいいかな?」
「……別にいいよ?」
そう頷くと、おじさんは嬉しそうに笑って帰って行った。
それから、おじさんは本当に時々会いに来てくれた。
園長先生に呼ばれて、小さな部屋でおじさんと話をするように言われた。
おじさんのうちには、オレより大きい子供が4人いることとか、タイチって名前のオウムを飼っているって教えてくれた。
鳥は好きかい?って聞かれたから、玉子は美味しいよって言ったら、そうかーって言っておじさんは苦笑いした。
おじさんはオレと話をするだけじゃなく、園長先生ともなにか色々話をしていたようだった。
そして帰るときになると、毎回必ず肩車をしてくれた。
おじさんの頭越しにみる景色は、やっぱりいつもより空に近くて、なんとなくキラキラと輝いて見えた。
「やぁ、英二くん、今日はおばさんも一緒に来たんだよ」
ある日、おじさんは奥さんと一緒に会いに来てくれた。
初めまして、英二くん、そう言って微笑むおばさんの笑顔は、まるでいつも公園でうらやましく眺めていたお母さんたちのようで、そのとても優しそうな笑顔に胸がキュンとなってドキドキした。
「ねえ、英二くん……英二くんさえ良かったら、おじさんのお家で一緒に暮らさないか?」
何度目かの2人そろっての訪問で、おじさんとおばさんはオレの手を握りながらそう言ってくれた。
え……?って驚いて2人の顔を見上げると、おじさん、最初に英二くんに会ったときから、そうしたいって思っていたんだ、そう優しい目で微笑んでくれた。