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【テニプリ】闇菊【R18】

第52章 【キクマルエイジ】ヨウジキ④




病院内では先生も看護師さん達も、相談所のおねーさんも凄く優しかった。
点滴や注射は嫌だったし、診察も沢山の検査もドキドキしたけれど、ちょっとずつ食べれるようになったご飯は暖かくて美味しかったし、絵本を読んでくれたり、玩具を貸してくれて夢中で遊んだ。


だけど母には会えなくて、毎日、周りの大人たちに、おかーしゃんは……?、そう確かめた。
だけど、やっぱり返事は帰ってこなくて、ますます母への恋しさを募らせた。


だんだんいっぱいご飯が食べれるようになって、お医者さんや看護師さんと運動も出来るようになって、いよいよずっとつけっぱなしだった点滴も外してもらえた。


「良かったね、英二くん、いい子でお医者さん達の言うこと聞いて頑張ったもんね!」


点滴を外してもらいながら、相談所のおねーさんに、うん!そう笑顔で頷いた。
「いい子」そのオレにかけられた言葉に、ザワザワと胸がざわめいた。


そしてその日の夜、オレはこっそり病院を抜け出した。


いい子で待っていなさいね、最後に聞いた母の言葉がはっきりと耳の奥に残っていた。
帰らなきゃ……、暗い夜道を裸足で歩き続けた。


幸い、アパートの近くの大きな総合病院だったから、帰り道はすぐに解った。
昼夜問わず、家から追い出されていた経験から、戸惑うことなく家に帰れた。


部屋の前に来るとそっと耳を押し当てて中の様子を伺ってから、ガチャガチャとドアノブを捻った。
だけど鍵も掛かっていて開かなくて、部屋の横に回ると窓から中をのぞき見た。
カーテンの隙間からのぞいた部屋の中は真っ暗で、その様子をうかがい見ることは出来なくて、仕方がないからドアの前に座り込んだ。


おかーしゃん……、あれから帰ってきてないのかな……?
座り込んだまま見上げた空には、相変わらず月が輝いていた。


疲れたな……久しぶりに沢山歩いて、もうクタクタだった。
ドアの前で横になると少しだけウトウトした。

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