第52章 【キクマルエイジ】ヨウジキ④
目が覚めたとき、一番に目に留まったのは真っ白な天井。
ピッ、ピッ、ピッ……そう定期的な機械音。
腕に付けられた点滴の細い管と、口元に送られてくる新鮮な酸素。
どこ……?
身体を起こそうとしたその時、あ、目、さめた?、そうオレの顔をのぞき込んで声をかけたのは、看護師さんと、どこかで見覚えのある女の人だった。
「今、先生呼んだからね」
そうオレの脈を計りながら看護師さんがいって、それからバタバタと入ってきた白衣の医師から聴診器で診察されたり、問診されたりした。
「久しぶりだね、英二くん」
「……誰?」
「覚えてないかな?前にお家でお話したんだよ?」
……思い出した。
まだ、おかーしゃんがちゃんと一緒にいてくれたとき、突然家にきた2人組。
『キミが英二くんね?、こんにちは』
そう戸惑うオレの様子を、笑顔の奥からしっかり観察していたあのときの様子を思い出す。
「ここ、どこ……?」
「病院だよ」
「病院……?」
「そう、英二くん、おなかペコペコで大変だったから、お姉さんが連れてきたのよ」
意識がなくなる前に入ってきたのは、母ではなかったことに表情を曇らせた。
「……おかーしゃんは……?」
そのオレの質問に、児童相談所のおねーさんは気まずそうな笑顔を見せて、まずは早く元気になろうね、そう言ってその答えをはぐらかした。
おかーしゃん……勝手にこんなところに来て、怒ってないかな……?
不安で一杯になりながら、ポタポタとゆっくり落ちる点滴の雫を眺めた。
「英二くん、何かしてほしいことある?」
「……コレ、嫌だ」
「んー、点滴は当分このままかなー……?英二くんが早く元気になるためだからね?」
クイッと腕を動かしてみる。
上手く動かせないのは点滴のせいか、それとも、何も食べてなかったからか……
「……いつ元気になる?」
「先生と看護師さんの言うことをちゃんと聞いたら、すぐになれるよ」
「……うん」
早く元気になりたい、早く元気になって、おうちに帰りたい……
そう思いながらまた点滴の雫を眺め続けた。