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【テニプリ】闇菊【R18】

第51章 【ハハコイ】ヨウジキ③




次の日、いつもの時間になっても母は、帰ってこなかった。
前にもあったことだから、特に気にもとめずに食パンを食べてゴロゴロして過ごした。
そのまま夜になり、少し心配になった。
明日は帰ってくるよね……?
そう不安な思いで小さな窓から月を眺めた。


でも次の日も、その次の日も母は、帰ってこなかった。
ガタンとドアポストにチラシが投函される度に、母が帰ってきたのかと何度も玄関まで確かめに行った。
また違った……そう毎回、肩を落として部屋に戻った。


一袋あった食パンが無くなって、買い置きのお菓子も無くなって、仕方がなく水を飲んで飢えをしのいだ。


おかーしゃん……明日は帰ってくる……?
昼夜問わず母のことを思って、部屋の小さい窓から空を見上げた。


何度目かわからない朝日がのぼる頃、ガチャっと部屋の鍵が開いた音がした。
おかーしゃん……?
ハッとしてヨロヨロとなんとか玄関まで歩いて出迎えると、ドアからそっと顔を覗かせた母に安堵して笑顔を向けた。


「おかーしゃん……お帰りなしゃい……」


大きな声は出なかった。
その代わり嬉しくて笑顔と涙がこぼれ落ちた。


「もう置いてかないでよ……1人はヤダよ……」


そう力なく言ったオレに母は、英ちゃん、待ってたの……?、そう気まずそうに声をかけた。


「ん、お腹、空いた……」


母は、持ってきたコンビニの袋から、食べていいわよ、そう言って菓子パンの袋を手渡してくれた。
力が入らなくて袋が開かなくて、歯で破ろうとしたら、貸して?そう言って母がその袋を開けてくれた。
優しい母が嬉しくて、菓子パンを貪りながらまた涙が溢れた。


「……英ちゃん、美味しい?」

「ん、おい、ひい……よ」


口一杯に頬張ったまま母の顔を見上げて笑うと、母は力なく笑った。
いつぶりかのオレに向けられた母の笑顔が凄く嬉しくて、それから、凄く安心してウトウトと眠りについた。


「英ちゃん、ごめんね……いい子で待ってなさいね……」


意識を手放す前に、そんな母の声が聞こえた気がした。

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