第51章 【ハハコイ】ヨウジキ③
「英二が悪いのよっ!、全部英二のせい!もう本当、私の前から消えてよっ!」
「ごめんなしゃい!ごめん、ごめんって、お願いだから許してっ!」
謝りうずくまると、母はそうオレを怒鳴り、それから何度も殴り続けた。
どうして……オレの何が悪かったの……?
意味は解らなかったけど、ただ許してほしくて謝り続けた。
「……あんたのせいよ」
「オレのせい……?」
「そうよ、全部あんたのせい!!子ども産んだせいで男に逃げられてばっかり!!あんたさえいなければ私は幸せになれるのに!!」
オレのせいなんだ……
おかーしゃんが幸せになれないのは、オレがいるせいなんだ……
「……英二、なによ、その目……?」
悲しみと絶望から母の顔を見ると、母はますます眉間にしわを寄せてそう呟いた。
「ほんと、可愛くない……!」
ため息をつきながら、吐き捨てるようにそう言って、それからオレを見て嘲笑った。
「だから邪魔なのよ……消えて?お願いだから……」
薄ら笑いを浮かべて言ったその母の目は、どこまでも冷たい瞳をしていた……
黙って家を出るとトボトボといつもの公園に出かけた。
昼間だから沢山の親子が楽しそうに遊んでいた。
茂みの中で膝を抱えて座ると、その楽しそうな光景を呆然と眺めていた。
羨ましい……
あんな風におかーしゃんや他の友達と楽しく遊びたい……
それが無理なら、せめて前のように2人で穏やかに暮らしたい……
空を見上げた。
澄んだまぶしい青空がオレンジに染まるまで見続けた。
今頃、おかーしゃんは仕事に行っただろうか……
もう帰っても大丈夫だろうか……
夕焼けが夕闇に変わる頃、空腹と同時に帰宅の途に着いた。
恐る恐る部屋に入るともう母の姿は無かった。
ホッと胸をなで下ろし、テーブルの上にあった食パンを一枚取り出し頬張った。
帰ってきたら、おかーしゃんの機嫌はなおっているだろうか……
不安な思いを抱えながら布団の中に潜り込んだ。