第51章 【ハハコイ】ヨウジキ③
「英二くん、お母さんのこと、好き?」
「……うん、好き」
「それじゃ、お母さんとはいつも何して遊んでいるの?」
何して……?、何て言ったらいいかわからず首を傾げた。
母に遊んでもらった記憶なんていっさい無かったから、答えようが無かった。
だけど試されてるのは解ってたから、何か言わないと……、そう思って一生懸命考えた。
「何なんですか!?勝手に!!英ちゃん、早く奥に行きなさい!!」
そう母に急かされて慌てて奥の部屋に向かおうとすると、あ、英二くん!、そうおねーさんが焦って声をかけた。
……いつも公園で一緒に遊ぶ、そう普段羨ましく眺めている親子たちを思い出しながらぼそっと答えた。
オレのその答えにホッとした顔を見せた母は、ほら、もういいから奥に行きなさい、そう優しい声で言った。
久しぶりの母のその声に、嬉しくて笑顔で頷いた。
「もういいでしょ!早く帰ってください!!」
「あの、お母さん、英二くん……だいぶ痩せてますね?食が細いほうですか?」
「そんなのあんたに関係ないでしょ!いい加減にしてよ!!」
玄関から母の荒い声が響いた。
その後、二言三言、話し声が聞こえたと思ったら、バタン!そう思い切りドアを閉める音が聞こえた。
部屋に戻った母に、おかーしゃん?そう声をかけると、チラッとオレに視線を向けた母は、そのまま窓際に身を潜めて外を確かめた。
「……なんなのよ、児童相談所なんて……、ったく、誰よ?、通報なんかしたやつ!」
そう眉間にしわを寄せながら外を眺めてブツブツ言った母は、さっきの人達が確実に帰ったのを確認すると、行ったわね……、そうポツリと呟いてオレの方を振り返った。
あ、怒られる!、反射的に頭を両手で覆った。
振り返った母の目は、いつもオレを殴り、罵倒するときのそれと同じだった。
さっきは優しい声をかけてくれたのに……、意味が分からないまま、ごめんなしゃい!そう慌てて謝ってうずくまった。