第51章 【ハハコイ】ヨウジキ③
ピンポーン、ピンポーン……
「こんにちはー、すみませーん……!」
数日後、突如、部屋のインターフォンが鳴り響いた。
英ちゃ~ん……、新聞の勧誘なら断っといて……、そう二日酔いの母が布団の中から声をかけた。
黙って頷いて、ガチャリとドアを開けた。
「キミが英二くんね?、こんにちは」
新聞の勧誘かと思ったその訪問者は、どうやらそうではないらしく、スーツできちっとした格好のおじさんと、優しそうなおねーさんのその2人組に、なんでオレの名前知ってるんだろう?そう不思議に思って小さく頷いた。
「お姉さんたちね、ちょっとお話したいなーって思って来たんだけど、お母さん、いるかな?」
その2人組は凄く笑顔だったけど、その笑顔の奥でオレの様子を注意深く観察しているようで、その視線に居心地の悪さを感じて俯いた。
「居るけど……寝てる」
「そっか、お昼寝してるのかな?」
「おかーしゃん、疲れてるから……」
「そうなんだ、英二くん、それで大人しく待ってるんだ、偉いね~」
胸がドキドキした。
試されているみたいで嫌だなって思った。
その目から避けるように後ずさりした。
「ちょっと英ちゃん、新聞の勧誘なら帰ってもらえって言ったじゃ……あんたたち、誰よ?」
話し声を不思議に思ったのか、奥から顔を出した母が、心当たりのないその訪問者に眉間のしわを寄せた。
「あ、英二くんのお母さんですね?私達、こういうものです」
「……児童相談所って……なによ、どういうこと?」
「ちょっとお話をお聞きしたいなって、子育てに悩んでいたりしませんか?」
自分のことだ、そう思って慌てて母の背中に隠れた。
母はオレを隠すように背中を押して、英ちゃんはあっちに行ってなさい、そう奥に行くように言った。
うん、そう小さく返事して奥にいこうとしたオレを、あ、英二くん、そうおねーさんが呼び止めた。