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【テニプリ】闇菊【R18】

第50章 【フアンナオモイ】ヨウジキ②




「おかーしゃん……?」


どうして?、そう目を見開いてもう一度母に手をのばした。
だけどもう母は手をのばしてくれなかった。


一瞬オレにのばしかけた手でもう一方の二の腕をギュッと掴むと、オレのすがるような目と視線を合わせないように母は横を向いた。


「……英ちゃん、パパに謝りなさい」

「……おかーしゃん……?」

「早く謝りなさい!!あんたが悪いんでしょ!!」


おかーしゃん、オレが悪いの……?
ちゃんと確かめて入ってこなかったから……?
こんなに思い切り殴られるほどのことをしたの……?


さっきから流れていた痛みからくる涙とは違う涙が、ポロポロと頬を伝い落ちる。
頬と背中は相変わらず痛かったけど、それ以上に胸の方がズキンと痛んでどうしようもなかった。


「……ごめんなしゃい……」


納得なんか出来なかった。
だけど、それに言い返すことはもっと出来なかった。
男が怖かった訳じゃない。
ただ、母がオレの味方になってくれなかったことが悲しかった。


口の中に広がる血の味と、しょっぱい涙の味が混ざってよけいに胸を締め付けた。


「……おかーしゃん、オレのこと、好き?」


消えそうな声で問いかけた。
……当たり前でしょ、少しの沈黙の後、母はそう呟いた。








それから、その男は頻繁にオレに手を挙げるようになった。
多分、理由は何でも良かった。
目つきが気に入らない、口答えしたから生意気だ、存在自体が鬱陶しい。


「しつけ」という言葉を言い訳にした、ただ単にストレス発散の捌け口としか思えないような暴力。


「ふざけんなよ、この、クソガキッ!」


何度も小さな身体に繰り返されるパンチや足蹴り。
小さな身体は、さながらサンドバッグのようだった。


あっという間に身体は痣だらけになった。


痛いよ、おかーしゃん……


理不尽に繰り返される暴力に黙って耐えながら、ずっと見て見ぬ振りをしている母に心の中で訴えた。

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