第50章 【フアンナオモイ】ヨウジキ②
「あのね、僕、パンケーキも大好きだけど、ママはもっと大好きだよ!」
「ふふ、ママも大好きよ」
空に浮かぶフワフワの白い雲を見ていたら、ふとさっきの親子の言葉を思い出した。
おかーしゃんもオレのこと、好きかな……
ポツリと呟いて胸に生まれた不安に慌てて首を振る。
先程の沢山の親子を目の当たりにして、自分の普通が本当は異常なんじゃないかと気が付いてしまった事への不安。
大至急でジャングルジムから駆け下りて、その不安から目をそらす。
くうー……もう一回鳴ったお腹の音。
帰ろう……
黙って出てきたから、おかーしゃんに怒られるかもしんないけど……
それから、もう終わってるよね……
そんな不安も抱えながら、アパートまでの道のりを歩いた。
重い足取りでたどり着いた玄関のドアにそっと耳を押し当てる。
大丈夫……おかーしゃんのあのコエは聞こえない……
静かにドアノブを捻って中にこっそりと入る。
静かだけど……おかーしゃん?
そっと部屋を覗くと、母は布団に横になっていた。
よだれと涙でぐちょぐちょの顔と、だらしなく開いたままの脚から嫌な気持ちで目をそらした。
「なんだ、いないと思ったら、出掛けてたのか?」
お前の母さん、またねちゃったぞ、そうニヤニヤ笑いながらトイレから出てきた男に嫌悪感がいっぱいで、チラッと一瞥しただけで小さくコクンと頷づくと、母の身体が見えないように上から毛布をかけた。
洗濯しっぱなしだったシーツやパンツをなんとか干すと、あとはご飯にふりかけをかけておにぎりを作って部屋の隅でこっそり食べた。
「おまえ、そんなガキなのに1人でそんなこと出来んのか?」
そう珍しいものをみるような目で見てくる男の言葉を無視して、黙々とおにぎりを頬張る。
ったく、可愛くねー、ガキだな、そう男は少しイラッとしたように舌打ちをして、それからタバコに火を付けると、フーッとオレにむかって煙を吹き付けた。