第9章 【キクマルトエイジ】
「2人の時はオレのこと『菊丸』じゃなくて『英二』って呼んでよ」
2人の吐息が混じり合う視聴覚室で、菊丸くんは私を揺さぶりながらそう言い出した。
念のためさ、菊丸って苗字、知られたくない仲間もいんだよね、なんて私を見下ろす彼はそう意味深に笑いながら続ける。
「えっ……?……っあ……なん……で……菊丸、くん……?」
意味が分からず聞き返す私に、英二、だってば、そう言って彼は私の敏感なところを激しく突き上げるから、その突き抜けるような刺激に、思わず、ああっ!!っと身体を反らせる。
「ほら、『英二』」
「え、いじ……く、ん……」
そう名前を呼ぶと菊……英二くんは満足そうに笑い、何度もそこを突き始める。
「あっ!あん、ああっ、はあっ……ああっ!!」
目を見開いてその波に飲まれていく。
行き場のない手を思わず彼の着崩れた制服に伸ばし、ギュッとその裾を握りしめる。
あっ、と慌ててその手を離すと、英二くんが、いいよ、別に、とニヤリと笑う。
その笑いを確認すると、必死に彼にしがみついた。
「はあっ……ぁあっ……えい、じくんっ!……英二くんっ!!」
彼の名前を呼びながら、その波に深く溺れていく。
そしてすぐにその波の渦から解き放たれた私の身体に、満足そうな顔をした彼が身を任せた。
「はーっ、やっぱすげー、ナカでイカすと、もー最高~♪」
そう満足そうに制服を着直す彼を、複雑な想いで見つめる。
「あ、でも学校で誰かいるときは今まで通り『菊丸くん』って呼んでよね、変に勘ぐられても面倒だからさ」
こっそりドアを開けて廊下を伺う英二くんは、噂通り防音効果バッチリ、鍵もかかるし便利だねぇ~、そう言いながら私にウインクをして去っていった。
なんで彼に、しがみついたりしたの・・・?
彼に対する嫌悪感と愛好感の狭間で、絶望感に打ちひしがれていった。