• テキストサイズ

【テニプリ】闇菊【R18】

第49章 【ハジマリノキオク】ヨウジキ①




結局、母と男の情事のせいで明け方まで眠れなくて、布団の中で耳をふさいで震えながら悪夢のような夜を過ごした。


やっと眠りについて目を覚ますと夕方で、母はいつものように厚い化粧をして仕事に行く準備をしていた。


「あ、英ちゃん、起きたの?パパと良い子にして待っていてね」

「大丈夫だよな、英二、ママに行ってらっしゃいしなさい」


昨夜の絡み合う2人の光景が瞼に焼き付いて黙って目を伏せた。
この男と2人にはなりたくないと思った。
玄関で靴を履く母の背中にピトッとくっつくと、どうしたの?甘えんぼさんね?そう機嫌よく笑う母に胸が痛んだ。


母が仕事に行くとあの男と2人になった。
2人で母が作ったであろう夕飯を食べた。
母がいつもタバコを吸ってビールを飲む席には、あの男が座ってそれらを飲み吸いしていた。


母のそれと違って、その様子を部屋の隅で嫌な気持ちで見ていた。


明け方、酔っ払った母が帰ってくると、また2人の乱れあうコエが聞こえてきた。
はやく終われ、はやく終われ、耳をふさいで身体を縮めながら、何度も何度も心の中で叫んだ。


嫌で嫌で仕方がなかったけど、母が機嫌よく笑顔を向けてくれるから、毎日続くその繰り返しにただ黙って耐え続けた。


だけどそんな日々は長く続かなかった。
毎日聞こえてきた喘ぎ声は罵声に変わり、2人の乱れあう物音は、何かに当たり散らす物音へと変わった。


「いつになったら働くのよ!私にだけこんな必死に働かせて!」

「ああ?いい条件の働き口を探してるって言ってんだろ!だいたい、仕事って言ったって、男に媚びうって酒飲んでるだけだろうが!」

「冗談じゃないわ!これじゃ、ニートが増えただけじゃない!英二だけでも邪魔なのに!!」


バンバンとテーブルを叩きつける大きな音や、ガシャンとコップが割れる音に怯えながら必死に耳をふさぎ続けた。


「英二だけでも邪魔なのに!!」


どんな物音よりも、激しい怒鳴り声よりも、思わず叫んだ母のその言葉が自分を一番傷つけた。

/ 1433ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp