第48章 【ケツイトカクゴ】
「そんで……ここに来たのかよ……?」
「はい、英二くんの行きそうな場所って考えて……コンテナかとも思ったんですけど……」
そう言いながらベンチに腰をおろすと、もしコンテナだったら、大五郎連れて電車に乗るつもりだったのかよ?って英二くんは力なく笑った。
「乗りますよ、英二くんのためなら……」
英二くんに膝を貸しながらそっとその髪をなでる。
こうして貰うと、とても落ち着くから……
英二くんにも気持ちが軽くなって貰いたいから……
ゆっくりと、その外ハネを解かすように何度も繰り返す。
でも、ここにいてくれて良かった……、そう呟いてそっと微笑んだ。
この東屋は英二くんを初めて見かけたところ。
あの雨の日に、震えるネコ丸を優しい眼差しで抱き上げていた。
それから……辛そうな目をして雨空をじっと見上げていた。
その瞬間、私は一瞬で心を奪われた……
前にペットショップから逃げ出したとき、ここで頭を抱えている私を英二くんが見つけてくれた。
今度はここで英二くんを私が見つけることができたから……
ここに英二くんがいてくれたことが凄く嬉しい……
自宅から必死に走ってきた。
大五郎を抱えて、走りにくいミュールを履いてきたことを後悔しながら、必死に……
やっと公園について東屋に英二くんの姿を発見したとき、本当に安心して涙があふれ出した。
でもベンチに身体を投げ出して苦しそうに息をしながら涙を流す英二くんの、その不安げで儚げな様子に、私の胸も張り裂けそうに痛んで、慌てて駆け寄った。
なんて言われるか不安だったけど、怖かったけど……
電話をしていた英二くんがあの辛そうな目で私を見上げて、渡した大五郎を受け取ってくれた瞬間、私の不安はすーっと消えて、残ったのはその消えてしまいそうな英二くんを、ただ愛おしく思う気持ちだけ……
「でもせっかく大五郎連れてきたのに、良いんですか……?」
すぐに大五郎を横においてしまった英二くんは、ずっと私のお腹に顔を埋めていて、私がベンチ座っても、膝枕する形で腰にしがみついたままで……