第48章 【ケツイトカクゴ】
「ん……、小宮山のお腹、キモチイイ……」
それって、私のお腹がプクプクなのかな……?、なんて隣に座っている大五郎のそれをチラッと見て苦笑いをしながら、英二くんにそう言ってもらえることに幸せを感じてそっと微笑む。
それから、凄く苦しそうだった英二くんが、私の腕の中で少しずつ穏やかな顔つきになっていくのに、こんな風に思ったら不謹慎なんだけど、それでもなんか凄く嬉しかった。
「英二くん……、少し、楽になりましたか……?」
「だいぶ……、でも、もうちょい、こうしてたい……」
重い……?、そう私の様子を伺うようにチラッと視線だけ上げる英二くんに、いいえ、私もキモチイイですよ、そう言ってその頬にそっと指で触れると、英二くんはくすぐったそうにはにかんだ。
ふふ、本当にあの時と逆みたい……
そう私の撫でる指先を心地良さそうにしている英二くんを見下ろしながら、私も微笑み返す。
「……小宮山……」
「はい……?」
ふと英二くんの声のトーンが低くなって、それから、私の髪をひとつまみ手に取り、自身の指先にくるくると巻き付ける。
パッと離してはまた巻き付けるを繰り返す英二くんは、フーッと大きく息をはいて、それから、瞳を閉じるとまた涙が零れ落ちた。
英二くん……?、そう不安に思って問いかけると、英二くんはまた大きく息をすって、小宮山、あのさ……、そう胸を押さえながら震える声を振り絞った。
「あのさ……、前に小宮山さ……」
英二くん、どうしたの……?
何を言おうと思ってるの……?
そんな苦しそうにして……まさか……?
「あ、あの……英二くん、無理に話さないで……」
「いんや……聞いて……?」
そう真っ直ぐ私をみる英二くんの目からは涙がどんどん溢れてきて、だけど、その涙の奥の瞳からは大きな決意と覚悟が感じられて、すーっと大きく息を吸い、はい、聞きます……そう、私も背筋を伸ばして覚悟を決めた。