第48章 【ケツイトカクゴ】
『小宮山さん、落ち着いて!』
動転して繋ぎっぱなしだった携帯から不二くんの声が漏れた。
大丈夫、小宮山さんなら……絶対、英二を見つけられるよ、そう不二くんの心強い声に目を見開いた。
そうだ、落ち着いて……、そう自分に言い聞かせてすーっと大きく息を吸った。
ダメ、焦ったらなおさら思考回路が低下する……
「ありがとうございます、不二くん、もう大丈夫です……」
携帯越しに不二くんにお礼を言った。
もう一度大きく息をすって脳に酸素を送り込んだ。
不二くんの言う通り、本当に見つけられるだろうか……
ううん、見つけなきゃいけない、不二くんは今、インターハイで遠い地方にいる。
お昼休みの体育館裏の時のように、彼に頼ることができないんだから、私がしっかりしなきゃ……
英二くんのところに私が大五郎を連れて行くんだから……!
英二くんが行きそうなところ……
鳴海さんや他の人のところなら、もうどうしようもない。
その線は捨てよう。
じっと空の月を見上げた。
コンテナの上で2人で見上げた儚い星々。
その下をゆっくりと進む赤い点滅の飛行機を、ぼやける視線で必死に追った。
それから、ハッとして目を見開いた。
グイッと涙を拭ってクルッと身体の向きを変えた。
「不二くん、私、行ってきます」
あそこしかない。
あそこにいなかったら、ううん、あそこにいてほしい。
これはもう賭だ。
うん、英二のこと、頼んだよ?、そういつもの優しい声で送り出してくれる不二くんの声に勇気を貰った。
はい、そう携帯の通話を終わらせると、ギュッと腕の中の大五郎を抱きしめて、それから真っ直ぐ前を向いて走り出した。