第48章 【ケツイトカクゴ】
『今すぐ英二を追って!』
「え……?」
『早くっ!』
追うって言ったってもう時間も経ってどこに行ったか解らないし、もしかしたらもう他の人と一緒にいるかもしれない……
それにもし追いつけたって、英二くんのあの様子じゃ、私、また怒られるだけだもの……
とても英二くんを追う事なんか出来なくて、無理ですよ……、そうポツリと呟いて首を横に振った。
『無理じゃないよ……小宮山さんなら、ううん、小宮山さんにしか出来ないんだ……』
私にしか……?、そう少し声のトーンを落として言う不二くんに問いかけると、うん、そう彼はどこか寂しそうに小さく頷いて、とにかく、今は急いで英二のところに向かって!そう改めて声を張り上げた。
『英二が苦しんでいるんだ!』
英二くんが……苦しんでいる……?
その瞬間、気が付いたら身体が勝手に走り出していた。
玄関でミュールを履きかけ、ハッとして慌てて部屋まで駆け戻り、さっきまで泣きながら抱きしめていた大五郎を抱えると、また玄関でミュールを引っ掛けて外に飛び出す。
飛び出したところで、やっぱり英二くんの行き先なんて解らなくて……
どうしよう、英二くんが苦しんでいるかもしれないのに……
ううん、あの不二くんがはっきり言いきるんだもん、英二くん、苦しんでいるのに……!
心臓がバクバクと大きく脈打って、ガクガクと身体中が震えて止まらず、全身から冷や汗が流れ出す。
英二くん……どっちにいったの?、右往左往しながら、どんどんと気持ちだけが焦っていった。