第48章 【ケツイトカクゴ】
「……英二くんは……いません……」
『いないって……どこに……?』
「……わかりません……」
他の人のところに……、そうポツリと呟くと、堪えきれずに涙が溢れ出した。
『他の人のところって、そんなはずない!』
「いいえ……誰のところに行こうと、私には関係ないって……だから……」
普段、とても穏やかな不二くんの、珍しく激しい物言いに戸惑いながらも、英二くんの私に向けられた冷たい言葉と態度は間違いではなくて、ただひたすら首を横に振った。
『……聞いてもいいかな?あの後、何があったの……?』
あの電話の後……、そう少し戸惑うように聞いてくれる不二くんに、私が英二くんのお願いを聞かなかったから……、そう答えると、尚更胸が痛んで苦しかった。
『お願いって……?』
「……言えなかったんです……どうしても……、言ったら全てが終わってしまいそうで……」
でも、言わないことで、結局本当に終わっちゃった……
バカみたい……思わず自分に自嘲した。
『もしかして、英二に好きか……聞かれた?』
どうして……?、そう不二くんが何故そのことを言い当てたのか戸惑う私に、そうなんだね?、そう不二くんは辛そうな声で答えると、僕も……ううん、僕だけじゃなく仲間みんなも聞かれたからね……、そう静かにため息を付いた。
『小宮山さん!英二、いつものバッグ、持って行った!?』
「バッグ……って、ここにありますけど……?」
ハッとしてそう声をあげた不二くんに戸惑いながら答えると、まずいな……、そう少し考え込むように不二くんは声を潜めた。
不思議に思って首を傾げると、でも自宅にいれば大五郎がいるから……なんてブツブツ言う不二くんに、あの、大五郎もここに……そう声をかけた。
どうしたんだろう、不二くん……?
不二くんの考えがよくわからずに戸惑っていると、小宮山さん!そうもう一度不二くんは声を張り上げた。