第48章 【ケツイトカクゴ】
「な、んで……探しにきたのさ……?」
私の腕の中で子どものように泣きじゃくる英二くんの涙が落ち着いた頃、彼がそうポツリと呟くから、またその髪を撫でてそっと微笑む。
そうだよね……
英二くんからしたら、あんな風に突き放された私が、まさか追いかけてくるなんて思わないよね……
そりゃ私だって怖かったけど……
英二くんにもっと冷たく酷い態度をとられると思って怖かったけど……
『小宮山は黙って、オレに呼び出されんの待ってりゃいいんだよ……』
何度も繰り返して思い出した、嫌でも自分の立場を思い知らされるその言葉。
それに逆らってまでも、英二くんを探さずにいられなかったのは、不二くんが電話をくれたから……
「不二くんが電話で教えてくれたんです、英二くんが苦しんでいるって……」
だから、もう私、無我夢中で……、そう苦笑いをしながら、あの後の不二くんとの電話を思いだす。
「もしもし、不二く……」
『小宮山さん!良かった!英二は!?』
何度も着信を無視する私に、不二くんは懲りずに再三電話を掛けてきた。
どうしたんだろう……?さすがに不思議に思い、震える手を伸ばして電話に出ると、不二くんは酷く焦った声で私の声を打ち消すから、普段の冷静な様子との違いに目を見開いた。
あ、あの……?、そう戸惑いながら声を上げると、ハッとした声で不二くんは、ごめん、驚かせちゃったね……、そう一呼吸置いて話し始めた。
『英二、いる……?さっきLINEで様子が可笑しかったから気になって……』
そう言った不二くんの声はほんの少し震えていて、必死に冷静でいようとしていたけれど、電話をかけてきたときの第一声からわかるように、内心、凄く焦っているのが伝わってきて、不二くん……そう胸をおさえた。