第48章 【ケツイトカクゴ】
「かーちゃん……オレ、今さ……近くの公園なんだけど……」
そうかーちゃんに自分の場所を呟いた途端、目に映ったのは大五郎のフワフワの足。
その向こうに見えるもう見慣れたミュール……
小宮山……?、目を見開いて顔を上げる。
「あ、あの……英二くん、大五郎が、必要、なんじゃ、ないかって、思って……」
そう走ってきたのか、息を切らして少し苦しそうな顔の小宮山が、不安そうな声でオレを見下ろしている。
『公園……!?公園ってそこの!?』
「あ、ああ……そうだけど、やっぱ、大丈夫……みたい」
『大丈夫って、ちょっと英二……』
まだ心配しているかーちゃんの電話の声は聞こえていたけれど、今はそれどころじゃなくて……
携帯をその場に置くと震える手で小宮山から大五郎を受け取る。
そっと大五郎のお腹に顔を埋めると、そのお腹は既に濡れていて、やっぱ泣いてたよな……そう思いながら小宮山の顔を見上げる。
そんなオレに、やっぱり連れてきて良かった……、そう小宮山は安堵の表情を浮かべた。
「小宮山……」
ポツリとその名前を呼んで大五郎を横に座らせると、それから小宮山をギュッと引き寄せてそのお腹に顔を埋める。
当然だけど小宮山は大五郎よりずっと細い身体で、でも温もりはとても安心できて、あんなに辛かった息苦しさも胸の痛みも、すーっと治まっていくのを感じた。
そっと小宮山がオレの頭を包み込み、それから髪を撫でてくれる。
ああ、なんか、あん時と逆だな……なんて小宮山を空港で助けたときを思い出して小さく呟く。
その優しい手つきに意識をむけると、途端にまた涙が溢れて声を上げて泣いた。
「ごめ、オレ……、また、酷い、言って、ごめ……」
しゃくりあげながら必死に謝るオレに、小宮山は黙って首を横に振り、ただ涙が収まるまでずっと優しく髪を撫で続けてくれた。
なんか、イイコ、イイコ、されてる気分で恥ずかしいんだけど、それ以上にその小宮山の優しさが嬉しくて心地良かった……