第48章 【ケツイトカクゴ】
夜更けの住宅街。
微かに聞こえる泣き声とオレの名前を呼ぶ声。
駆け出した足音がそれを打ち消す。
小宮山、ごめん、ほんと、ごめん……
何度も傷付けては後悔して、結局、傷つけることしかできない自分……
瞼の裏で幸せに満ち溢れた笑顔が、一瞬で涙と恐怖に変わる。
「英二くんっ!待って下さい……!」
『待ってよ!お願いだからっ……!』
「ごめんなさいっ、私、ちゃんと言いますから!」
『ごめん、ごめんって!もうしないからゆるしてっ!』
「お願い……行かないで……」
『もう置いてかないでよ……1人はヤダよ……』
全速力で追い払おうとしても、決して振り切れない声。
辛く苦しい過去がそれに同調する……
あれ……ここ……
がむしゃらに走ってたどり着いたのは、あの公園の東屋。
さんざん走り回って、結局こんな近場に戻ってきたのかよ……
ふーっと大きく息を吐いていつものベンチに腰掛ける。
小宮山にはあんな風に言ったけど、他の誰かのとこになんて行くつもりなくて、これからどーするかな……そうポツリと呟いて空を仰ぐ。
ドクン____
大きくざわめく心臓。
苦しさに拍車が掛かる。
『ねえ、オレのこと、好き……?』
いつだって帰ってこないその答え。
不安に押しつぶされそうで慌てて背中に手を伸ばす。
……あ、バッグ、小宮山んちじゃん……
苦しくなったときのネコ丸のタオルはいつものバッグの中で、財布と携帯しか持ってこなかったことに激しく後悔する。
苦しい……助けてよ……
大石ぃ……不二ぃ……みんな……
とーちゃん、かーちゃん……にーちゃん達、ねーちゃん達……じーちゃん、ばーちゃん……
オレノコト、スキ?
ダレデモイイカラ、オレノコト、スキダッテイッテヨ……!
押し寄せる不安感に恐怖しながら、携帯を手にすると、片っ端から『オレの事、好き?』そうLINEに打ち込んで送信した。