第2章 【ネコトオモイデ】
「……夢?」
目が覚めて真っ先に感じたのは胸が締め付けられるような切なさと、それから隣で丸まって眠むる愛猫の暖かさ。
ゆっくりと身体を起こすと、眠りを邪魔されたと薄目をあけてみゃあと不満を漏らす。
「ふふ、ごめんごめん」
そっと頭を撫でてあげるとゴロゴロとのどを鳴らしてまた瞳を閉じる。
その仕草一つ一つがとても愛らしい。
耳の後ろを撫でながら、先程の夢を思い返す。
それは半年前のこと。
今はクラスメイトである彼を始めて見かけたときのこと。
そして私と彼と愛猫との
大切な思い出___
「なんだお前、捨てられたのか?」
その日、彼は公園の東屋でずぶ濡れになった段ボールの前にしゃがみ込んでいた。
手には段ボールと同じようにずぶ濡れの小さな子猫。
それを愛おしそうに抱いている彼。
みゃあ、みゃあと元気よく鳴く子猫を片手に、んー……なんかあったっけ、と彼はカバンをあさる。
「弁当全部食っちゃったしなー、あ、お菓子食べる?」
ん?ネコってお菓子駄目だっけ?……腹減って死ぬよりはいいよな?、そう言いながら彼はえびせんの袋を開けてそれを小さく砕き、手のひらであげる。
「つーか、お前きったないなー、そんなんじゃ誰にも拾ってもらえないぞ?」
そう言って彼はカバンから出したタオルでワシャワシャと子猫を拭いてあげる。
ほら、コレでイケメンだぞ?そう言って抱き上げ、オデコ同士をつけて笑う。
私はそのひと昔もふた昔も前の、少女マンガの王道ネタの光景に、一気に魅了されてしまったのだ。