第47章 【オレノコト】
「あの、英二くん、シャワー……」
「あ、オレ、今、これやっちゃうから先に浴びてきていいよん?」
小宮山の家に帰ると携帯をチェックするオレに、小宮山がそう問いかけるから、チラッと視線を向けて返事をする。
「それとも一緒に浴び……」
「今日は絶対だめです!!」
そう顔を真っ赤にして勢いよくリビングを出て行った小宮山に、ま、女の子には色々あるしねー、なんて思って含み笑いをする。
たまに届くお誘いのLINEはすべてブロックして、友人達の普通のメッセージには適当に返信をして、家族からの様子を伺うそれには、心配かけないようにこまめに返信をする。
不二、いよいよ明日が最終日かー……
乾からの結果を知らせるグループトーク、負けられない理由ができた、そう宣言したとおり順当に勝ち続け、残りの試合日程も明日で終了。
幸村に真田、跡部に白石……流石に残っているメンバーは強豪揃い。
頑張れ!、激励のメッセージとスタンプを送る。
「すみません、お先しました」
部屋に小宮山が戻ってくると携帯を置いてドレッサーに移動する。
はにかみながら小宮山は腰を下ろし、その濡れた黒髪をドライヤーで乾かしていく。
恥ずかしがる小宮山をなだめて、半ば強引に一緒に風呂に入ったとき、さんざん湯船でイタズラしたオレに、お風呂はリラックスする大切な時間なのに……って頬を膨らませた。
まぁまぁ、機嫌直してさ?って髪を乾かしてあげたら、鏡越しにみる小宮山がすげー気持ちよさそうな顔をしていたから、それからはよくこんな風に乾かしてあげる。
ほーんと、キレイでサラサラだよな……
乾き始めた小宮山のキレイな髪が、オレの指の間を流れて行く様子をぼんやりと眺めた。
ありがとうございます、そう嬉しそうに頬を染める小宮山の髪をまた撫でて、んじゃ、オレもシャワー浴びるね、そう言って部屋を出る。
洗面所に行くとオレ用にちゃんとバスタオルが用意してあって、そんなすっかり当たり前になった小宮山の気遣いに頬が緩んだ。