第47章 【オレノコト】
青春台の高台公園、懐かしい大石との反省会と場所。
コンテナの上で小宮山に優しくキスをする。
遠くに見えるきらびやかな夜景と頭上のはかない星々。
必死に闇に飲み込まれないように瞬いている。
ドクンと胸に走る不安感。
小宮山の後頭部を引き寄せる腕に力を込める。
見てよっ!
ねぇ、ちゃんと見てっ!!
ちゃんとオレを見てったら!!!
次々と闇の底から沸き起こる苦い感情。
必死に心から追い出そうと、より強く小宮山を抱きしめ、より激しく舌を絡ませた。
オレの胸に添えられた手がギュッと握られて、それからトントンッと胸をたたかれる。
ハッとして我に返ると、小宮山が真っ赤な顔で苦しそうにしているのに気がついて、慌てて力を緩めて唇を解放した。
「ごめーん、つい夢中になっちった♪」
ペロッと舌を出して笑うと、ハアッと大きく酸素を吸い込んだ小宮山は、本当、ですか……?、そう息を整えながら少し伺うような顔をする。
なんだよ、本当ですか……って?
小宮山の髪をクシュッと握るように撫でると、ほんとだって、そう呟いて目を伏せる。
そろそろ帰る?、顔を上げてニイッと笑うと、はい、そう小宮山は少し寂しそうな笑顔で返事をした。
よっと先にコンテナから飛び降りると、両手を広げて小宮山に笑顔を向ける。
少し戸惑いながら、オレの胸に飛び込むように降りた小宮山を、そのままギュッと抱きしめると、暫く鼻先に触れた髪の香りを確かめた。
指を絡めて2人並んで歩く。
小宮山の指先から穏やかな感情が流れてくるようで、どこか安心して笑顔を向ける。
『菊丸くん、璃音ちゃんみたいないい子、他にいないんだからね!』
ふと頭の中に響くおっちゃんの声。
わかってるって……そう呟いて目を伏せた。
おっちゃんの言葉に慌ててオレを庇う小宮山を思い出し、ズキンと胸を痛ませる。
それから、マスコットチェーンをすげー嬉しそうに喜ぶその様子……
こんなオレを受け入れてくれる女なんて、小宮山だけだって……
でもそんな小宮山に心を開いてやれなくて、ごめんな、そう心の中で謝った。