第47章 【オレノコト】
「小宮山ー、オレ、もう腹ペコー、なんか食べてこー?」
辺りはもうすっかり涼しくなっていて、時計をみるとすでに夜の7時をさしていた。
そうですね、これから帰って夕飯を作って貰うのも悪いですし、なんて苦笑いしながら、なんか本格的なデートみたい……、そうこっそり思ってドキドキする。
「ここでいいー?」
「あ、はい」
駅前のハンバーガーショップで英二くんが持ち帰りでーって言うから、家に帰ってから食べるのかな?って思ったら、電車には乗らずに、こっちこっち、そう学校の方に歩き出す。
坂を上り詰めてたどり着いたのは青春台を見晴らせる高台の公園。
その上にあるコンテナに英二くんはひょいっと登り、小宮山もはやくー、そう手招きをする。
はやくーと言われましても……そう困りながらよじ登ろうとしても、当然そんな所に登れるはずもなくて、英二くんはそんな私を、仕方がないな~、そう笑って引き上げてくれた。
「小宮山、運動神経悪すぎー」
「運動神経はいたって普通です!……多分」
そう頬を膨らませながら顔を上げて、その開放感に目を見開く。
青春台を一望できる丘の更に高いコンテナの上からは、藍色に染まる街並みが見下ろせて、夕闇の切なさの中に華やかな夜景が彩り始めて、何とも言えない雰囲気を醸し出していた。
そっと空を仰ぐとうっすらと星が見えて、ただひたすらため息があふれる。
そんな私に英二くんは、どう、ここ、凄いだろー?そう言ってまたニイッと笑った。
ハンバーガーを食べ終わると辺りはすっかり暗くなっていて、さっきより夜景と星がくっきりと見えてまたため息が溢れる。
「ここさ、中学んとき、大石とよく反省会した場所なんだよね……」
あの頃は楽しかったな……、そう少し寂しそうな顔で英二くんがポツリと呟いたから、その遠くを見つめる目に胸が締め付けられた。
「そんな大切な場所に私なんか連れてきて良かったんですか……?」
締め付けられた胸をおさえながら問いかけると、小宮山は特別、そう言って英二くんは私の肩を引き寄せて、それから優しくキスをしてくれた。