第46章 【フタリノキョリ】
マスコットチェーンとはいえ、この大きさともなると、そこそこの値段がかかる。
金額の問題じゃないけれど、自動販売機で飲み物を買って貰うのとは訳が違う。
不二くんがあの髪留めを買ってくれるというのを、断ったときもそうだったけど、英二くんにこれを買って貰う理由なんてないもの……
「あの、英二くん、本当にいいですから!」
思わず少し強い口調で拒否してしまい、あって我に返る。
英二くんの動きが止まり、怒られる!そう反射的に身体を縮こませる。
あ、あの……いかがなさいますか?、そう戸惑っている店員さんの声も恥ずかしくて、もうどうしたらいいか分からずにただ俯いてしまうと、そんな私の横を英二くんは黙って通り過ぎ、マスコットチェーンの棚へと戻る。
ああ、また機嫌、損ねちゃった、そう思ってズキンと胸が痛んだ。
「だったらさ……?」
怒っていると思った英二くんの声がそうではなくて、大丈夫……?、そう恐る恐る顔を上げる。
「小宮山はこっち買ってよ?」
そうすれば、おあいこじゃん?、不安な思いで見上げた英二くんは、棚から大五郎のマスコットチェーンを手にしてニイッと笑っていた。
英二くん、私が遠慮しちゃうから、気にしないように考えてくれたの……?
ほい、そう差し出されたそれを震える手で受け取ると、そっとカウンターに置いてお金を払う。
リボンは赤ね!なんてラッピングしてもらう英二くんの声を聞きながら、ギュッとドキドキする胸をおさえる。
可愛くラッピングされたマスコットチェーンを店員さんから受け取ると、お互いに交換してそれから笑いあう。
嬉しい……英二くんからのプレゼントなんて夢みたい……
優しい彼氏さんですねー、そう笑顔をみせる店員さんに、少し戸惑ってから、はい、優しいんです、そう呟いて口元を緩ませる。
英二くんは決して彼氏じゃないけれど、怖いときもあるけれど、だけど、凄く優しいの……
ありがとうございます……、そう呟いて滲む涙を指で拭うと、ラッピングの袋をギュッと抱きしめた。