第46章 【フタリノキョリ】
「私、好きそうですか……?」
「うんにゃー、小宮山の部屋にも何個かアクセントに飾ってあるし、大五郎貸してやると、嬉しそうにずっと抱っこしてるじゃん?」
そう私の顔をのぞき込んでニイッと笑う英二くんのその様子に、ますます心臓が速く高鳴って頬が熱くなる。
恥ずかしくて慌てて視線をマスコットチェーンに戻すと、そんな私の様子に英二くんは、小宮山、顔、真っ赤ー、そう言ってまた笑った。
そりゃ、赤くもなりますよ……
そう頬を膨らませながら眺めていたマスコットチェーンの中に、ふと大五郎にそっくりのクマちゃんを発見する。
ふふ、毛色もクビのリボンの色も、本当、そのまんま……
「英二くん、コレ、大五郎そっくりですよ?」
「あ、小宮山ー、ネコ丸発見ー♪」
マスコットを指差しながら発した2人の声が重なり、お互い顔を見合わせてクスクス笑いあう。
「本当だー、大五郎じゃん!オレ、気がつかなかった~」
「私もです、普段はこう言うの、真っ先にネコちゃんを見るんですけど……」
お互いが自分の好きなものじゃなくて、相手の好みのものに気がついたことが可笑しくて、またそれが、なんかくすぐったくて嬉しくて……
本当、ネコ丸そっくり……、そっとネコ丸のマスコットに触れながら、そうポツリと呟いた。
そんな私の様子を、んー……って考え込みながら見ていた英二くんは、小宮山、それ、気に入った?そう問いかけるから、え?あ、はい、可愛いです、そう言って答える。
「んじゃさ、買っちゃるよん?」
そう英二くんはウインクしながら、ネコ丸のマスコットを手にとり、ほいっとそれをレジに置いたから、え?あ、あの……、そう慌てて引き止める。
「そんな、買ってもらえませんよ!」
「いーんだって、オレが買うって言ってんだから別にいーじゃん?」
そんなこと言ったって、やっぱり英二くんにお金を出して貰うわけにいかないよ……
慌てて英二くんの腕を押さえて、必死に首を横に振った。