第46章 【フタリノキョリ】
「もう、菊丸くんは出入り禁止!」
突然、そう声を上げた店長さんが英二くんの背中を押しながら、お店から追い出そうとしたから、え?あ、あの、店長さん!、そう慌てて止めようとしたけれど、僕は璃音ちゃんの味方なの!そう言って店長さんは英二くんを外に追い出してしまった。
それが客に対する態度ー!?、なんて、両手の握り拳をまっすぐ伸ばしながら、外へと追い出された英二くんに、はぁーっと頭を抱えてため息をつく。
「もう、店長さん、私は構わないんですから、そういう意地悪言わないでくださいね?」
おっちゃんのバカ!、そうお店の外で店長さんに文句を言っている英二くんの声に苦笑いしながら、いつものカリカリを出して貰うと、急いで会計を済ませる。
「菊丸くんはいい子だけど、でも璃音ちゃんの気持ちを知ってる癖に酷いよ!」
そう怒ってくれる店長さんの気持ちはありがたいけれど……
いいんです、私はこれで、なんて店長さんに笑顔を見せて、また来ますね?そう言ってお店のドアを開けた。
お待たせしました、そう少し不安な思いでお店から出ると、苦笑いの英二くんが出迎えてくれて、私の持つカリカリの袋に手を伸ばしてくれるから、ありがとうございます、そう言って笑顔を向ける。
「菊丸くん、璃音ちゃんみたいないい子、他にいないんだからね!」
「店長さん!いいんですってば!」
思わず店長さんに強く言い返してしまい、ハッとして、ごめんなさい、そう慌てて謝る。
こっそり見上げた英二くんはまた俯いたまま目を伏せていて、外ハネの髪でその表情は伺い見ることが出来なかった。
「……小宮山、行こ?」
低い声で呟く英二くんに、はいっ、そう慌てて返事をしてその背中に続く。
でも後は何を話したらいいかわからなくて、ただ黙々と歩く。
英二くん、嫌な思いしたよね……?
面倒になられたらどうしよう……、そう不安な気持ちで歩いていると、そっと英二くんの手が私の指に触れて絡められる。
良かった……その温もりに安心して自然と頬がゆるんだ。