第46章 【フタリノキョリ】
「あの……英二くん、私、ちょっと出かけてきますね……?」
夕方、辺りが涼しくなってきた頃、そう少し遠慮しながら英二くんに声をかける。
「別にいいけど、今から?どこ行くのさ?」
「ペットショップに……もうパクパク食べるから……」
そう言って脚に擦りよるネコ丸を抱き上げると、愛おしくて頬ずりをする。
そんな、私の様子に、小宮山、本当にネコ丸大好きだねー、なんて英二くんはニイッと笑った。
「カリカリ?おっちゃんのとこ?だったらオレも行くー」
そう立ち上がり準備をする英二くんに、え、あの……いいんですか?、そう申し訳なく思って返事をすると、なに?小宮山、オレと出かけんの嫌なのー?なんて頬を膨らませるから、いいえ、そんな、そう慌てて首を横に振った。
「小宮山、爪……可愛い」
2人肩を並べて歩いていると、私の爪の先を見た英二くんがそう指を絡めながら声をかける。
何度も失敗したけれど、何とか形になったネイルアート。
英二くんがお昼寝している間にこっそり挑戦してみた。
頑張って良かった……そっと握る手に力を込める。
小宮山、不器用だけど、こう言うことは頑張ってるよね、なんて言われて、家庭科だって私なりに頑張ってるんですけど、そう言って苦笑いした。
「おっちゃん、来たよーん♪」
お店に着くと英二くんが声を弾ませて店内へと入っていく。
相変わらず他のお客さんはいなくて、菊丸くんー?なんて奥から顔を覗かせた店長さんは、私たちの姿を確認して目を見開いた。
「もしかして付き合うことになったの!?」
そう嬉しそうな店長さんの言葉に、あー……って言葉を濁して英二くんが目を伏せる。
店長さん、私が英二くんを好きなこと知っているし、英二くんが私の気持ちを知っているのもわかっているんだから、手を繋いで仲良さそうにお店に来れば、そりゃ、付き合ってると思うよね……
気まずい空気が流れる中、違いますよー、そう答えて精一杯の笑顔をみせると、そんな私の顔を見た英二くんは申しわけなさそうにまた目を伏せた。