第46章 【フタリノキョリ】
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ふとオレの携帯にLINEが届いて、確認してみるとそれは乾からで、定期的に届く不二のインターハイの様子を知らせるものだった。
画像や動画ではなく、文字だけで淡々と知らせてくれるそれは、オレの不安定な精神状態を考えての乾なりの配慮。
さすが不二、宣言通り頑張ってんじゃん、そう実行中継状態で送られてくるそれを眺めながら、あの中3のアツい夏を懐かしむ。
「不二、頑張ってるよん?」
「あ、はい、私のところにも不二くんから連絡きました」
凄いですよね、不二くん、そう携帯を操作して嬉しそうに笑う小宮山に、不二のやろー、オレには連絡しないくせにー、なんて頬を膨らませて、それから小宮山の携帯の画面に視線を向ける。
不二にメールの返信をする小宮山の文面は、他の女子に比べたらだいぶ控えめだけど、それでも可愛らしくデコレーションされていて、オレに送られてくるなんの飾り気もない、一言のみの返信とは大違いだった。
ま、当然だけどさ……
オレ達のメールなんていつもオレから一方的に送る呼び出しのメールだけで、小宮山からくるものなんて、大抵が「はい」や「わかりました」の一言だけの返信で、そんなやりとりを気楽でいいやって思っていたのは確かに自分なんだけど……
「小宮山、前にも見せて貰ったけどさ、また携帯見せてくんない?」
「別に構いませんけど……?」
でもあれから不二くんしか増えてませんよ?、そう不思議そうにする小宮山から携帯を受け取ると、さっと操作して履歴を確認する。
オレが小宮山を無視するようになってからは、当然だけど簡単なオレとのやり取りすら一切なくなっていて、その代わり頻繁に繰り返されている不二との履歴がずらりと並んでいた。
オレとのやり取りとは全く違うその華やかで楽しそうな文面は、オレと不二に対する小宮山の心の壁の差を表しているようで、なぜか胸の辺りがギュッとなった。