第46章 【フタリノキョリ】
小宮山の家のリビングで、ソファーに身を投げ出して座り、当然のようにテレビのスイッチを入れる。
一週間の同棲生活ももう残り僅か、もうすっかり我が物顔だよなー、なんて思いながらチョコレーツのお宅訪問番組にチャンネルを合わせると、ちょうど彼女たちのアップにナイスタイミング♪そう声を弾ませて身を乗り出す。
「やっぱかわいいよにゃー♪」
ふふーん♪、そんなオレのしまりのない顔を微笑ましそうに眺めながら、本当に好きなんですね、そう言って小宮山はキッチンに向かうと、何飲みます?そう声をかけてくれる。
「んとねー、ビールー♪」
「……え!?」
「や、やだにゃー、冗談だよー、冗談ー♪」
いや、夏で暑いしね……本当はグビグビって呑みたいけどね……でも小宮山の前だしね……?
だいたい、小宮山んちの冷蔵庫にビール入ってないもん。
入ってたとしても、勝手に飲めないし。
オレんちなら、みんな飲むからこっそり飲んでもバレないんだけどなー……なんて思いながら、麦茶でいいよん?、そう苦笑いで、画面のチョコレーツに視線を戻す。
「オレ、このお宅訪問、当たったことあんだよん?」
そうなんですか?なんてオレの隣に座って驚いた顔をみせる小宮山に、うんにゃー、中3の時ね、そうあん時のことを懐かしく思い出しながら、麦茶をひとくち口に含む。
せっかく当選したチョコレーツを独り占めできる権利、みんなに内緒にしてこっそりと楽しむつもりだった。
家族で海水浴に行く約束を仮病でごまかし、部屋を飾り付けてケーキまで焼いて、準備万端でお出迎えするはずが、突然押し掛けてきたいつものメンバーによって全て台無し。
「挙げ句の果てにさ、オレの名を語った乾がチョコレーツからキスされちゃってさー……」
ガクリと肩を落とすオレの話をクスクスと楽しそうに笑いながら聞いている小宮山に、笑い事じゃないっての!そう頬を膨らませて、それから、ま、最後はチョコレーツと楽しい時間を過ごせたけどねー、なんて苦笑いをした。