第45章 【カミドメ】
「……!」
ドキンと大きく心臓が跳ねて思わず逃げ腰になると、ガバッと起き上がった英二くんの手が背中に回されて、だーめだったら、そうニヤリと笑う。
「もう!恥ずかしくてただでさえ心臓止まりそうなんですから、このタイミングで目を開けないでくださいっ!」
そう恨めしく思いながら英二くんの顔を見ると、はは、ごめ~ん、そう全く悪いと思ってなさそうな言い方に、本当にもう、そう頬を膨らませる。
「はあ、そんなことするなら、目隠しでもしちゃいますからね……」
そうブツブツ文句を言う私に、英二くんは何故かニヤリと笑い、なにー?小宮山、そう言うプレイ興味あんの?なんて言い出したから、ハッとしてカアーッと頬が熱くなる。
「そんなわけないじゃないですか!」
「まあまあ、今度、ちょーっと縛ってみる?」
「嫌ですよっ!絶対!!」
本当、何を言い出すやら……
まあ、確かに最初の私のは失言だけど、縛るだなんて……そう、頬を膨らませながらも、ドクンと心臓が脈を打ってそっと震える手首を抑える。
それじゃ、まるであの時みたいじゃない……
鮮明に思い出される最初の時の記憶。
もう気にしてないとは言え、やっぱりあの時は凄く怖くて悲しかったから、そう言うプレイを趣味として楽しむ気にはなれない。
英二くんにとっては、たいしたことないんだろうけど……
「小宮山、はーやーくー!」
頬を膨らませて私の肩を揺らす英二くんの声に我に返る。
あ、は、はい、そう改めてするとなると、また恥ずかしくて声が上擦ってしまい、緊張しすぎー、そう英二くんに笑われる。
そんなこと言ったって……、そうもう一度ため息をつくと、クイッと身体を伸ばしてそっと英二くんの唇にキスをする。
フワッと触れた瞬間、先ほど英二くんが口に含んだカフェラテの香りがして、心臓がキュッとなる。
恐る恐る舌をのばして絡ませると、普段と違って受け身な彼の動きにもどかしさを感じながらも、その甘くてほろ苦い味を夢中で味わった。