第45章 【カミドメ】
部屋を出てリビングに移動すると、ゴロゴロと喉を鳴らすネコ丸に、ごめんね、昨日はぜんぜん構ってあげなかったもんね?、そう言って頬ずりする。
ソファーでネコ丸の甘えモードが落ち着くまでつきあってあげると、シャワー、浴びてくるね、そう汗ばんだ身体が気持ち悪くて洗面所に移動する。
先に洗濯しようとかごの中の洗濯物を選別していると、目に留まった英二くんのシャツにドキッとして、手にした途端、ほんのり漂うその香りにクラクラする。
ギュッとそのシャツを抱きしめるとドキドキして、体温がどんどん上昇していくのを感じた。
……や、やだ、コレじゃ、私、まるで変な人じゃない!
こんな所、英二くん本人に見られたら、恥ずかしくて死んじゃう、そう慌てて振り向いて見られてないことを確認すると、ほっと胸をなで下ろしてそのシャツを洗濯機へと入れた。
洗濯機のスイッチを入れてから、シャワーを浴びて汗ばんだ身体と火照った熱を洗い流す。
クローゼットから持ってきたお気に入りのトップスとスカートに着替えて髪を乾かす。
英二くんが一緒だからちょっとだけ……
そう派手にならないように、ほんの少しだけメイクもする。
もう少し柔らかい顔だったらな……、そう鳴海さんの可愛らしい顔を思い出して、こっそりとため息をつく。
英二くんが私に興味をもってくれるきっかけになったのは、この見た目のおかげだから以前ほど嫌悪感はないけれど、それでも彼の好みの系統とは違う自分の雰囲気が少し残念に思うこともある。
でも英二くん、私の笑顔、いいって言ってくれたもん!
洗面所の鏡を見て笑顔を作る。
無理に笑おうと作った笑顔は、にたーっとひきつっていて、なんか違う……そう肩を落とした。