第45章 【カミドメ】
カーテンの隙間を縫って窓から差し込む日の光。
うっすらと開けた目に飛び込んでくる男物のパジャマ。
私の身体をしっかりと包み込む心地よい腕の重さ。
……英二くんだ……
そっとその胸に頬を寄せて、小さい声でおはようございます、そう挨拶する。
朝、目覚めて一番最初に目に映るものが大好きな人……なんて、この世にこれ以上幸せなことってあるのかな……?
ドキドキする胸を押さえながらまた寄り添うと、昨日私がつけたしるしが目に留まり、それを指でそっと撫でる。
早朝とはいえ、今は真夏の8月、すでに部屋の温度は上がりつつある。
それは英二くんの腕の中に包まれていれば尚更で、既にじんわりと身体は汗ばんでいるんだけど、その汗と熱ですら心地よくて……
寝ているからいいよね……?、そう英二くんが確実に寝ていることを確認すると、英二くん、大好き……、そう小さく呟く。
するとますます体温が上昇して、心臓が爆発するんじゃないかと思った。
ふと部屋の外から聞こえてくる小さな音。
カリカリとドアを引っ掻くネコ丸の入れてーの合図。
……あ、そっか、名残惜しい気持ちを押し殺し、英二くんを起こさないようにそっとその腕の中を抜け出す。
うわっ……身体全体が痛いっ!
全身を襲う倦怠感、関節に走る鈍い痛み……
これは筋肉痛も入っているな……、そう久々の行為の反動と、自分の日頃の運動不足に苦笑いする。
音をたてないように窓を開けると、穏やかな風が部屋の中に吹き込んできて、汗ばんだ身体を癒してくれる。
今日も暑くなりそうだな……なんて窓から見える青い空と入道雲を眺めた。
みゃぁー、そうドアの外から聞こえる催促の声に我に返り、慌ててクローゼットから着替えを取り出して、それからドアをそっと開ける。
隙間から勢いよく飛び込んできたネコ丸をサッと捕まえると、しーっと人差し指を唇に当てる。
そのまま部屋を出て静かにドアを閉めると、英二くんが起きちゃうでしょ?そう言ってネコ丸の額にキスをした。