第44章 【ヨフケノケツイ】
嬉しかったのに、本当は凄く嬉しかったのに、ナオちゃんとのことがあったから、素直に市川さんの好意を受けれなくて……
「本当は、市川さんに、ありがとうって言いたかったんです……」
自分の気持ちに素直になったら、ずっと押し殺してきた感情が、せき止められていた水のように凄い勢いで溢れ出す。
なのに、構わないでって……迷惑だからって……、そう後悔と懺悔の念に苛まれて震える私の身体を、英二くんは優しく撫で続けてくれた。
「大丈夫だって、市川、小宮山のこと、すげー心配してたからさ……」
本当ですか……?、そう問いかけながら恐る恐る視線を上げると、英二くんは、んって頷いて、それから優しく微笑んでくれている。
「謝ったら……市川さん、許してくれるかな……?」
不安で抱きしめる手に力がこもると、きっと喜ぶよん?そう言って抱きしめ返してくれて、とんっと、その胸に頬を寄せると英二くんの胸の鼓動が聞こえてきた。
「オレ、あいつ、中学んときから知ってるけどさ、裏表なんかない、そのまんまの奴だからさ……」
何も心配しなくて大丈夫だからさ……、そう言って髪をなでてくれる英二くんのその言葉と胸の鼓動を聞いていると、不思議なんだけど本当に大丈夫な気がした。