第44章 【ヨフケノケツイ】
……でも、英二くん、コレ、どうするんだろう……?
こんなんでいいですか?、そうプリントアウトした写真を英二くんに渡すと、ん、サンキュ、そう英二くんは受け取って、机の上のペン立てからハサミを手に取り写真を切り取り出す。
「真っ黒じゃ可哀想じゃん?小宮山、こんな風に笑ってたんだろ……?」
そう言って英二くんはノリで写真を一枚一枚、丁寧にマジックで塗りつぶしたところに貼り付けていく。
バランス悪いけどさ、そう言って私の写真を押さえながら、小宮山の笑顔、すげーいいよん?そう呟いたその言葉に涙が頬を伝う。
「過去のことなんか気にしてさ、いつまでも引きずってたら、一度しかない人生、勿体ないじゃん……?」
それは確かに私にかけられた言葉なんだけど、私には英二くんが自分に言い聞かせているように思えて、その腰に手を回すとギュッと力を込めて抱きしめた。
英二くんは、今、何を思っているのかな……?
どこか寂しそうな笑顔で、私の髪を撫でてくれる彼のその目は、よく空を見上げるときに見せるものと同じに思えて、ズキンと胸に鈍い痛みが走り、慌ててその胸に頬を埋める。
英二くん、私、学校でも笑えると思いますか……?そう呟いた私に、大丈夫だって、そう英二くんはまた優しく微笑んでくれる。
笑えたら変われるかな……そうポツリと呟いた。
「……でも、何度も私、酷いこと、言っちゃった……」
体育祭の後、一人で後かたづけをしていた体育館倉庫。
一緒に打ち上げ行こうよ?そう笑顔で誘ってくれた市川さんに、迷惑です、なんて言って冷たく突き放した。
ううん、それだけじゃない……
水をかけられたとき、心配してタオルをさしだしてくれた……
机に落書きをされたとき、一生懸命消そうとしてくれた……
それを拒んだ私に集まったクラスメイトの非難の声に声を荒げてくれた……
そして、嫌がらせをしてきたあのグループの人たちに、本気で怒ってくれた……
その度に、思っていることと反対の言葉を口にした自分に後悔し続けた……